あの校庭が教えてくれたこと

今日は胸弾む中学の入学式。
早起きして4キロの長い道のりを足早に学校に向かう。
校門に立ち、校庭を見渡すと青々とした芝生が諸手を広げてやさしく迎えてくれているような光景に、緊張した気持ちがやわらいでいく。

朝露が朝日にキラキラと輝いている。
まるで「ようこそ!」のサイン?
真新しい靴のつま先に朝露が転がる。

これから毎日足を踏み入れる校庭。
皆の思い出を見守る場所、色々なシーンで大切な場所。
美しい校庭をきれいに保ちたい。
この時、そんな気持ちが芽生えた。

それから卒業するまでの3年間、毎朝校庭の3拾い運動(3回ゴミを拾うこと)に徹した。

額に汗して頑張った夏の日。
うららかな春の日は、春風と歌いながら。
枯れ葉と追っかけっこした風の強い日、
セーラー服で寒さに凍えた冬の日・・・
どのシーンも懐かしい。

頑張ったあとのチリ一つない美しい校庭を眺めながら、清々しい達成感を覚えた。
3年間、挫けずに継続出来たことを我ながら誇りに思う。 

月日は流れ、卒業の日。
今日でこの校庭ともお別れ。

お世話になった校庭への感謝の気持ちを込めて最後の3拾いをする。
楽しかったこと、頑張ったこと、友達と過ごしたかけがえのない時間、
様々な思い出が走馬灯のように胸をよぎる。

いつものようにきれいになった校庭を見届けて、卒業式にのぞんだ。

式は順調に進み、校長先生の手から卒業証書が次々と手渡されていく。

いよいよ自分の番となり、卒業証書を無事受け取って壇上を降りる際、会場に目を向けると、父がなぜか父兄席ではなく、招待席に座っている姿が目に入る。

気になりながらも、プログラムはさらに進み、3年間の努力を称える表彰式に移った。

皆勤賞等の賞が次々と読み上げられていくなかで突然、

「善行賞!○○ ○○○」

と会場いっぱいに、私の名前が響き渡った。

思いがけず呼ばれた自分の名前に戸惑いながら壇上に上がり、表彰状を受け取る。
会場いっぱいの拍手を浴びながら、面映い気持ちで壇上を下りた。

ふと招待席の方を見ると、そこには誇らしげに胸を張って笑顔を見せている父の姿があった。

その時はじめて、父が招待席にいた理由がわかった。

先生方から父と私ヘの、この上ない嬉しいサプライズのご褒美だった。

入学式にあの校庭で芽生えた小さな決意。
その決意を在学中に実行し続けてこれたこと、あの時培った奉仕の精神が、何十年も年を重ねた今も、しっかり根付いて現在の職場でも生かされている。

大切なことを教えてくれた
あの校庭に心からありがとう!!

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